
2021 年に設立した「沖縄SVアグリ株式会社」は、沖縄県産コーヒーの産業化を目指している会社です。現在は、将来的なまとまった量の収穫に向けて、コーヒー栽培を進めています。
県産コーヒーが安定供給できる体制が整うまでは、海外産のコーヒー豆の加工や販売に力を入れています。2024 年には、海外から仕入れて焙煎したコーヒー豆の販売を試みようと EC サイトを開設。Web サイトや SNS での発信を試みたものの、思うように周知できず、売り上げが伸び悩んでいました。
そこで、初めてデジタル広告に挑戦。Google の AI を活用した「P-MAX キャンペーン」と「検索広告」を併用することで、効果的にリーチを拡大できました。
設定が難しいのではと心配していましたが、そんなこともなく、認知拡大に悩んでいた時間を、経営者としての重要な意思決定に割けるようになりました。
スポーツクラブ運営から、農業へフィールドを広げた理由
沖縄SVアグリを立ち上げたきっかけは、2015 年までさかのぼります。
当時プロサッカー選手としてプレイしていた私は、沖縄における観光と IT に次ぐ産業として、スポーツ産業を創出することをゴールに、スポーツクラブ「沖縄SV(エスファウ)」を設立しました。現在はサッカークラブが中心で、J リーグ入りを目指して運営を続けています。
クラブチームの運営資金はスポンサー収入がメインです。しかしそれだけに依存せず、より安定した運営を目指すため、自分たちで収益化できる事業を育てようと着目したのがコーヒー栽培でした。選手のセカンドキャリアの受け皿にもなり、また沖縄という土地にも新たな産業を生み出して貢献できると考えました。
沖縄県産コーヒーの可能性
当時、沖縄で農業を体験する機会があり、担い手の不足や、耕作放棄地の増加といった業界の課題を肌で感じていました。
沖縄における農業の可能性を模索していた中で、方向性が定まったきっかけは、コーヒー農家との出会いです。沖縄では、小規模ながら昔からコーヒーを栽培していることを聞きました。
沖縄は、赤道を挟んで南北 25 度の「コーヒーベルト」からギリギリ外れているため、コーヒーの栽培環境として最適とは言えません。しかし逆に言えば、日本で最もコーヒーベルトに近い沖縄は、コーヒーを産業にできる可能性が最も高い地域とも言えます。ハワイのコナコーヒーのような特産物に育てられれば、沖縄を支える産業の 1 つになり得るのではないかと考えたのです。
そして 2019 年、ネスレ日本株式会社、琉球大学、名護市と共同で「沖縄コーヒープロジェクト」を発足。沖縄でコーヒーを安定して栽培するための研究から始め、2021 年には、コーヒー栽培から加工、販売までを手掛ける新会社として、沖縄SVアグリを設立するに至りました。
「販売力を高めたい」も、EC に苦戦
沖縄の土地に合ったコーヒー品種を選定し、苗木を育て、ようやく初収穫を迎えたのは、創業から数年が経ったころ。試行錯誤を重ねながら、2025 年現在は栽培の 2 サイクル目に入っています。課題はまだ残されていますが、近い将来の一般販売を目指して取り組んでいます。
最終的に目指しているのは、コーヒー豆の栽培から加工、販売までを一貫して行う 6 次産業化ですが、収穫が安定するまでの期間として、現在は加工と販売に注力しています。海外からコーヒー豆を仕入れて加工し、サッカーの試合会場やキッチンカーを使って販売してきましたが、さらなる販路の拡大を目指して、2024 年に EC サイトを開設しました。クラブチームの Web サイトや個人の SNS での発信など、思いつく限りの方法を試したものの、売り上げは思うように伸びていきませんでした。
Google 広告で認知拡大に成功、月間の購入者数は 1.8 倍に

そんな中で活路を見出したのが Google 広告です。デジタル広告の運用は初めてでしたが、Google 広告は専任のサポートに相談ができるため、担当者からのアドバイスを受けながら広告配信の準備を進めていきました。
広告を配信すると、すぐに顕著な効果が現れました。配信期間の月間の平均購入者数は、配信前の 184% に増加したのです(*1)。
具体的に活用したのは、「P-MAX キャンペーン」と「検索広告」の 2 つです。EC サイトでの購入につなげるために、いずれも広告のコンバージョン率(CVR)を指標に配信しました。
P-MAX キャンペーンは、検索や YouTube、ディスプレイ、Discover、Gmail、マップといった幅広いチャネルを横断した広告配信を 1 つのキャンペーンで管理できるのが特徴です。設定した目標に合わせて Google の AI が配信を最適化してくれるので、当初想像していたような難しい設定は必要ありませんでした。
テキストや画像素材を入稿しておけば、配信面に合わせて広告クリエイティブも自動で作成してくれます。動画のクリエイティブも自動生成できたため、コストをかけずに幅広い配信面に広告を届けられました。
P-MAX キャンペーンと併せて、検索広告も配信。キーワードの追加や、効果の低いキーワードの削除などの改善を自動で行ってくれる「最適化案の自動適用」はたった 3 秒ほどで設定できました。自動的に広告の単価を最適な状態に調整してくれる「自動入札」も活用しました。
また「テキスト広告」の見出しや説明文は、数値を見ながら随時改善を進めました。今回は「コーヒーのプロがこだわった」「バランスが良く飲みやすい」といった商品の特徴を見出しに追加することで、CVR が高まる傾向にありました。
いずれも、Google の AI が最適化を図り、自動でパフォーマンスを高めてくれるのは、驚きでした。
また検索広告の配信では、Google 広告のサポート担当者からのアドバイスを参考に、自動入札と相性のよい「インテント マッチ」も活用しました。インテント マッチで広告を配信すると、指定したキーワードの検索結果だけでなく、同じ検索意図を持ったより広いクエリに対しても配信を広げられます。AI が、クエリの背景にある人々の意図を捉え、自動でより興味関心や購買意向の高い人に広告を届けてくれるのです。
今回は「コーヒー 農業」「沖縄 コーヒー ギフト」といったキーワードを指定して配信を開始。そこから AI が関連するクエリに広告を広げ、学習が進むにつれてパフォーマンスが高いクエリへと予算を集中していきます。配信結果を見ると、「オーガニック ドリップ コーヒー」「スペシャリティ コーヒー 通販」「コーヒー ギフト 香典返し」「沖縄 内祝い 人気」など、同じような検索意図を持った幅広いクエリで CV を獲得できました。
経営者としてのコア業務に集中できるように
認知の拡大はもちろん、実際の購買につながると確認できたことで、経営者としてのコア業務に集中できるようになりました。沖縄県産コーヒーの産業化という挑戦に心置きなく取り組めるようになり、長期的な戦略を考えることに時間を使えるようになったのです。今後も、コーヒー豆の栽培、加工、販売のノウハウとスキルを高め、収益化できる仕組みを強化していく予定です。「沖縄産のコーヒー」というこの土地だけの付加価値で、地域活性化への挑戦を続けていきます。